uropatho’s diary

泌尿器病理医によるブログ

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前立腺癌に対する放射線治療後の再発・・・ASTROの定義をチェック

こんにちは。

 

前立腺癌に対して様々な放射線治療が行われますが、その治療後の再発というのはどう判断しているのかという点をチェックしました。

 

NCCN (national comprehensive cancer network) のガイドラインに記載されている再発の定義をみていくと、、

 

RTOG-ASTRO (Radiation Therapy Oncology Group - American Society for Therapeutic Radiology and Oncology) Phoenix Consensus における定義を採用しているとあります。

 

参照先↓

https://www.nccn.org/professionals/physician_gls/PDF/prostate.pdf

 

いわゆるPSA再発を原文にしたがうと、"PSA persistence/recurrence" と表記されます。

 

① PSA increase by 2 ng/mL or more above the nadir PSA is the standard definition for PSA persistence/recurrence after EBRT with or without HT; and
② A recurrence evaluation should be considered when PSA has been confirmed to be increasing after radiation even if the increase above nadir is not yet 2 ng/mL, especially in candidates for salvage local therapy who are young and healthy.

 

以上が英文で記載されている定義です。

 

つまり、

「治療後の最低値(nadir)からPSAが2以上あがると、ホルモン治療の有無にかかわらず、放射線治療後のPSA再発 (persistence/recurrence) と判断」

されるとのこと。

 

前立腺摘除後の再発とは定義が異なることに注意すべきです。

放射線治療後のPSA再発に対してのマネジメント【NCCNガイドラインから】

こんにちは。

 

最近NCCNのガイドラインにログインできるようになったので(無料で登録可能)、最新版の「前立腺癌」をみていきます。

 

https://www.nccn.org/professionals/physician_gls/PDF/prostate.pdf

 

前立腺癌のガイドラインはVersion 4.2019 (2019/8/19) が最新。

 

今回は、「放射線治療後のPSA再発に対して」の項目をチェックします。

⇒ Radiation therapy recurrence (PROS-13)  に記載されています

 

前立腺生検はすべて病理医のもとに来るので頻繁に関わりますが、放射線治療やその後の経過については関与していないので、イメージがつかみにくく、よくわかっていませんでした。ガイドラインをチェックしてでおおよその流れを把握していこうと思います。

 

まず最初にチェックするのが "PSA persistence/ recurrence or Positive DRE" であり、放射線後の再発については


・ RTOG-ASTRO (Radiation Therapy Oncology Group - American Society for Therapeutic Radiology and Oncology) Phoenix Consensus による定義を使用します。

 

放射線治療後に、PSAが高いとか上昇してくるという場合や直腸診で陽性であるという場合のガイドラインになります。

 

まずは、Local therapy (局所治療) の対象かどうかによって方向性が変わります。

 

①局所治療対象となるのは
・T1-T2, NX or N0 (最初に限局性前立腺癌と診断)
・期待余命 >10年
・PSA < 10 ng/ml
というケース。

 

②局所治療対象にならないのは、①以外の場合でありその流れは

②-1
Bone imaging へすすみ骨転移の検索。

そのうえで
②-2
ADT (ホルモン治療) or 経過観察

②-3
病勢進行時には
・Systemic Therapy for Castration-Naive Disease ・・・ PROS-14
・Systemic Therapy for M0 CRPC ・・・ PROS-15
・Systemic Therapy for M1 CRPC ・・・ PROS-16
にそれぞれ進みます。

 

①局所治療対象の場合

①-1
・リスクの階層化→PSADT ・・・PSA倍加時間を調べる
・骨転移検索
・前立腺MRI
・前立腺生検
・次を考慮 (胸部CT, 腹部/骨盤のCT or MRI or PET/MRI)
・前立腺生検

①-2
・前立腺生検で癌が認められた場合で、遠隔転移がない場合
→経過観察 or RP+PLND (前立腺摘除+リンパ節廓清) or Cryotherapy (凍結療法) or High-intensity focused ultrasound (HIFU, 高密度超音波) or Brachytherapy (小線源治療)

・前立腺生検で陰性であり、遠隔転移もない場合は
→経過観察 or ADT

・転移陽性 もしくは 治療後に進行がみられた場合は, ②と同じくPROS-14, 15, 16へ。

 

感想

放射線治療後に前立腺摘除 (salvage RP) が提出されてくることはほとんどないので、適応がないのかと思っていましたが、条件付き (salvage RP に習熟した外科医、合併症が高率に起こる) で記載されていましたので、限定的ではあるものの施行される場合もあるということです。

実際には手術を避けたくて放射線を選んだ患者も多いでしょうし、合併症が増えるとなれば、実際に放射線治療後に手術にすすむ方は非常に少ないだろうなと。

それと、active surveillance 後の生検は診るものの、radiation 後の生検は見かけないので、大多数の流れとしてはADT (ホルモン治療) に流れているのかなと思われます。

腎癌に対する最近の治療薬を調べてみる (2019/9/24)。

腎癌に対する治療がどのように変わって来ているのか、簡単に調べてみました。

 

NCCNのガイドラインについては2018年版は日本語版をみることができます。

 

NCCNガイドライン 泌尿器がん|NCCNガイドライン日本語版

 ソラフェニブが2008 年 4 月に、スニチニブは同年 7 月に、アキシチニブは2012年8月に発売開始され、2013年3月にはパゾパニブが適応拡大された。さらに mTOR 阻害剤であるエベロリムスは 2010 年 4 月、テムシロリムスは同年 9 月に発売開始

ベバシズマブ、カボザンチニブ、レンバチニブ、エルロチニブは未だ本邦においては、腎癌に対する適応はない

免疫チェックポイント阻害薬に関して本邦では、2016年8月に根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対する二次治療以降の治療としてニボルマブが、2018年8月に化学療法未治療の中および高リスク進行腎細胞癌に対してイピリムマブとニボルマブの併用療法が適応拡大された

昔は腎癌は化学療法が効かないと勉強した覚えがありますが、複数の薬剤が登場してこの10年でずいぶん様変わりしているようです。(ほぼついていけてませんが)

 

英語版では

https://www.nccn.org/professionals/physician_gls/PDF/kidney.pdf

ログインが必要ですが無料で閲覧可能。

現時点では、2019年8月5日の、Version 2.2020 が最新版。

 

ステージⅣの clear cell RCC (clear cell histology)ではどんな薬剤を使用するかというと、

Favorable risk においては

・Axitinib + pembrolizumab, Pazopanib, Sunitinib が推奨されており (preferred regimen)、

・ほかの推奨薬として Ipilimumab + nibolumab, Cabozantinib, Akitinib + avelumab も記載されています。

 

Poor/ intermediate Risk においては

・Ipilimumab + nibolumab, Axitinib + pembrolizumab, Cabozantinib (preferred regimen) 

・他の推奨薬として Pazopanib, Sunitinib, Axitinib + avelumab

 

ファーストラインと追加治療では異なるガイドラインがあります(省略)。

これらの薬剤を日本の商品名にすると、

Axitinib + pembrolizumab = インライタ + キイトルーダ

Pazopanib = ヴォトリエント

Sunitinib = スーテント

Ipilimumab + nibolumab = ヤーボイ + オプジーボ

Cabozantinib = (日本では未承認)

Axitinib + avelumab = インライタ + バベンチオ(抗PD-L1抗体)

 

といったところです。 

 

もうすでに覚えきれないのですが、non-clear cell histology に関してはガイドラインが別に用意されていまして、

・ 推奨は Clinical trial, Sunitinib

・他の推奨レジメンとして Cabozantinib, Everolimus

が記載されています。

Everrolimus = アフィニトール (mTOR阻害) 

 

他にも特定の状況下で役に立つレジメンも記載されているので、興味があれば原本を参照ください。

 

一般名を聞いて商品名が浮かばないレベルですが、少しずつおぼえておこうと思います。

病理医としては、 clear cell RCC なのか non-clear cell なのかを確実に診断することが求められるのだと感じました。

たまに、chromophobe cell RCC を Clear cell RCC と間違ってしまうケースも見かけますので、自分としても気をつけていきたいところです。

 

それでは。

 

【論文チェック】前立腺生検組織を Multiplex method で作成する。

こんにちは。

 

前立腺生検の検体作成方法についての文献が出ていました。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

・2019

・American journal of clinical pathology

・Murugan P et al.

・ミネソタ大学

 

生検組織の作成 (processing) に関して、通常の作成方法とBxChip を使ったprocessing について比較・検討したという内容です。

 

・multiplex method のほうが時間が短縮できる (3倍)

・Nonlinear fragmentation was absent (直線的でない断片化がなかった)

 

結論

・The BxChip reduced tissue fragmentation and increased efficiency of prostate biopsy diagnosis. It also resulted in overall cost savings and significantly increased tissue length

BxChip を使うことで組織の断片化が避けられ、効率的になる。結果的にコスト削減や(検索可能な)組織長の増加が得られる。

 

アブストラクトだけではイメージがつかみにくかったので、BxChipについて調べてみました。

 

https://www.lumea.org/lab.php

 

こちらの LUMEAというところが開発しているようですが、溝のついた台座に6本のコアを入れることができ、6本同時にブロックにすることが可能なようです。

 

https://www.lumea.org/images/lab/multiplexing_02.png

リンク先の画像ですが、溝をほった台座ごと組織を薄切しています。

隔壁ごと組織にしてしまうというのは、コアごとの混在がなくて、とくに断片化したときには有利かと。

 

私自身はサンペルカというスライドガラスの保護に使われている発泡ポリエチレンフォームに溝掘り加工をしてもらって、まっすぐな組織を作成できるように工夫していたのですが、包埋の際には台座は破棄していたので、この発想はなかったですね。

 

https://www.lumea.org/images/pathology/slides.png

Up to 18 cores can be multiplexed on one slide, reducing slides from 12 to 2.

 

これを使うことで標本のクオリティは上がりそうですが、隔壁がそのまま標本になってしまうのは、賛否両論あるかもしれません。

使ってみたいところです。

 


BxChip™ and the Lab

 

【論文チェック】Early stage 精巣腫瘍に関するAUAのガイドライン

こんにちは。

Early stage の精巣腫瘍についてAUAのガイドラインがでていました。

 

こういったガイドラインが公開されているのはさすがAUAです。

ざっと見ていきます。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

・2019

・journal of urology

・AUAチームによるシステマティックレビュー

 

・エビデンスのレベルを 「A (high), B (moderate), or C (low)」に

・それに基づく推奨レベルを 「Strong, Moderate, or Conditional Recommendations」とする

・エビデンスが不足する場合は 「Clinical Principles and Expert Opinions」とする

・このステートメント (声明) は、下記のアルゴリズムとともに使用する。

 

https://www.auajournals.org/cms/attachment/821061e4-78c7-497e-bd62-3474f9448de4/ju.0000000000000318f1.jpg

Figure 1

 

https://www.auajournals.org/cms/attachment/a48b8fa7-8753-4243-bb69-ca92c46589e8/ju.0000000000000318f2.jpg

Figure 2

 

https://www.auajournals.org/cms/attachment/d9c0c28b-5875-4a12-8137-83ee3eb55c31/ju.0000000000000318f3.jpg

Figure 3

 

全部はチェックしきれないので推奨レベルの高いステートメントをピックアップしておきます。

 

4. Scrotal ultrasound (US) with Doppler should be obtained in patients with a unilateral or bilateral scrotal mass suspicious for neoplasm. (Strong Recommendation; Evidence Level: Grade B)

 

 8. Patients with a testicular lesion suspicious for malignant neoplasm and a normal contralateral testis should undergo a radical inguinal orchiectomy; TSS is not recommended. Transscrotal orchiectomy is discouraged. (Strong Recommendation; Evidence Level: Grade B)

高位摘除はよいが、経陰嚢的な摘除はだめ。

 

 18. In patients with newly diagnosed GCT, clinicians must obtain a computed tomography (CT) scan of the abdomen and pelvis with IV contrast or MRI if contraindications to CT. (Strong Recommendation; Evidence Level: Grade B)

Germ cell tumor と診断されたら腹部・骨盤の造影CTかMRIをとる。

 

19b. In the presence of elevated and rising post-orchiectomy markers (hCG and AFP) or evidence of metastases on abdominal/pelvic imaging, chest x-ray or physical exam, a CT chest should be obtained. (Strong Recommendation; Evidence Level: Grade C)

マーカーが上がったり腹部骨盤の転移があれば、胸部の精査もする。

 

20. In patients with newly diagnosed GCT, clinicians should not obtain a positron emission tomography (PET) scan for staging. (Strong Recommendation; Evidence Level: Grade B)

コスト・被ばく・偽陽性などから最初のステージングにはPETは使わない。benefit < harm 。

 

21. Patients should be assigned a TNM-s category to guide management decisions. (Strong Recommendation; Evidence Level: Grade B)

 

26. Clinicians should recommend surveillance after orchiectomy for patients with stage I seminoma. Adjuvant radiotherapy and carboplatnin-based chemotherapy are less preferred alternatives. (Strong Recommendation, Evidence Level: Grade B)

ステージ1のセミノーマの場合、術後の放射線照射やカルボプラチンの使用をしない。

 

27. For patients with stage IIA or IIB seminoma with a lymph node ≤3cm, clinicians should recommend RT or multi-agent cisplatin-based chemotherapy based on shared decision-making. (Moderate Recommendation; Evidence Level: Grade B) For patients with IIB seminoma with a lymph node >3 cm, chemotherapy is recommended. (Moderate Recommendation; Evidence Level: Grade B).

セミノーマの場合、リンパ節転移が3cm以下かどうかで方針が変わってくるようです。

 

28. Clinicians should recommend risk-appropriate, multi-agent chemotherapy for patients with NSGCT with elevated and rising post-orchiectomy serum AFP or beta-hCG (i.e. stage TanyN1-2S1). (Strong Recommendation; Evidence Level: Grade B)

 

30. For patients with a stage IB NSGCT, clinicians should recommend surveillance, RPLND, or one or two cycles of BEP chemotherapy based on shared decision-making. (Strong Recommendation; Evidence Level: Grade B)

 

このあたりが推奨レベルの高いものです。当たり前のこともあるかと思いますが、印象に残ったのは、意思決定をシェアしましょうということが盛り込まれていることが多いので、基本的にはカンファレンスなどで情報を共有して方針決定することが望ましいようです。

 

Table 1. Definition of the germ cell consensus classification

Table 2. Clinical stage I seminoma active surveillance follow-up 

Table 3. Clinical stage I NSGCT active surveillance follow-up

あとは、テーブルに予後による分類 (good / intermediate / poor) やフォローアップスケジュールなども記載されています。

 

病理医としてはとても把握しきれない量ではありますが、ざっと読んだだけでも何が重要かという点がみえてきて参考になります。

 

【論文チェック】Reverse Polarity を有した乳頭状腎腫瘍

こんにちは。

 

先日、clear cell papillary RCC の文献を読んでいて、" reverse polarity" という単語が頭に残っており、それがもとで今回の論文をpick up してみました。

 

同じ著者が最近2本の論文を載せています。

www.ncbi.nlm.nih.gov

1本はこちら (abstractのみ)

・2019

・AJSP

・Al-Obaidy KI,Grignon DJ ら

・インディアナ大学など

・papillary RCC の中で臨床病理学的・染色体的に特徴的な subset を評価した。
・18症例 (男性8・女性8)
・The tumors had branching papillae with thin fibrovascular cores, covered by cuboidal to columnar cells with granular eosinophilic cytoplasm, smooth luminal borders, and mostly regular and apically located nuclei with occasional nuclear clearing and inconspicuous nucleoli ・・・形態的には核が上方(apical)にあるというのが特徴か
・免疫染色では、AE1/AE3, epithelial membrane antigen, MUC1, CD10, GATA3, and L1CAM, CK7 が陽性、CD117, vimentin が陰性であった。AMACR/p504s はvariable staining
・同様にコントロール群では、GATA3 はすべて陰性で、AMACR/p504s, vimentin は陽性
・FISHによる染色体の分析を行ったところ chromosome 7 trisomy (33%), trisomy 17 (33%), and trisomy 7 and 17 (20%) などが見られた
・腫瘍の再発・転移は認めていない

 

つまり、papillary RCC のうちGATA3が陽性の群は独立した疾患分類ではないかということです。

 

続くもう1本がこちら

www.ncbi.nlm.nih.gov

同じ著者によるその後の論文です。

前回はAJSPでしたが、今回は Modern pathology です。

本当は全文読みたいのですが、どちらもオープンアクセスではありません。

 

・これまでに papillary RCC と診断された腫瘍のうち4%がこの "papillary renal neoplasm with reverse polarity"
・組織学的に、"papillary or tubulopapillary" な構築を示し、" apically located nuclei" を有する。・・・おそらくこれが "reverse polarity" であり ccpRCCと似ているのかも
・GATA3, L1CAM に陽性で、vimentinが陰性。
・次世代シーケンサーで10の腫瘍を分析。次いでPCRでKRASの変異を調べた。
・KRASミスセンス変異は, 8/10 に見られた (clustered in exon 2—codon 12)
・野生型の1例は BRAFに変異あり
・コントロール30例ではKRASの変異はなかった

この腫瘍はKRAS変異をもつ唯一の腎腫瘍であると結論しています。

 

感想

PRCCのうちの4%ということなのであまり多くはないですし、これが予後などに違いがでるのかというのは今後の報告待ちでしょうか。

これからは "reverse polarity" にも注目していきたいところです。 

 

【論文チェック】Clear cell papillary renal cell carcinoma のレビュー記事

こんにちは。

 

比較的新しい疾患分類ですが、Clear cell papillary renal cell carcinoma (ccpRCC) に関する記事を見つけたのでチェックしてみました。

open access で病理画像もみることができますし、ショートレビューなので短時間で読むにはおすすめ。

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

・2019 

・Archives of Pathology & Laboratory Medicine

・Zhao J, Eyzaguirre E.

・PMID: 30672334 DOI: 10.5858/arpa.2018-0121-RS

・テキサス大学

 

内容をピックアップしていきます

・ccpRCCは切除腎腫瘍の1-4%を占める

・RCCの variant としては4番目の頻度・・・ (意外と多い)

・他のサブタイプと間違いやすい。 clear cell RCC, papillary RCC and translocation RCCなど

・18-88才と幅広い年齢に発症、性差はない

・ほとんどの症例は stage 1 

・WHO/ISUP grade も 1 or 2

 

組織像は特徴的です

 

https://www.archivesofpathology.org/na101/home/literatum/publisher/pinnacle/journals/content/arpa/2019/15432165-143.9/arpa.2018-0121-rs/20190823/images/large/i1543-2165-143-9-1154-f01.jpeg

https://www.archivesofpathology.org/doi/full/10.5858/arpa.2018-0121-RSより引用) 

 

・組織パターンは tubular, papillary, solid, cystic, acinar など 

・特徴的な分枝を示す管状構造

・とくに、核は基底膜からはなれて直線的に配列する(linear fashion)像がみられる

 

免疫染色は診断に有用

・CK7+, CAⅨ+[cuplike], 34βE12+

・CD10-, TFE3 ー 

※ CAⅨはluminal border が抜ける cuplike membranous pattern が特徴、ccRCCやTCEB1-mutated RCC では boxlike pattern 

 

・遺伝子的にも ccRCCやPRCCと異なるプロファイル(ccRCCは3pの欠失・VHL変異、PRCCは染色体7, 17, Yなどのコピーナンバー異常あり)

・確認されている遺伝子異常として、 MET, PTEN, ERBB4, and STK11

・Noncoding RNA profiling revealed overexpression of miR-200 family in ccpRCC (マイクロRNAの変化も報告あり)

・unique entity だということははっきりしている

 

・最近報告された2つの entity との鑑別も注意

・tuberous sclerosis complex–associated papillary RCC and transcription elongation factor B subunit 1 (TCEB1)–mutated RCC

 

本文から引用↓ 診断のフローチャート

https://www.archivesofpathology.org/na101/home/literatum/publisher/pinnacle/journals/content/arpa/2019/15432165-143.9/arpa.2018-0121-rs/20190823/images/large/i1543-2165-143-9-1154-f02.jpeg

 

・予後は良好

・362例の症例のフォローアップでは、腫瘍の再発・転移・腫瘍関連死は報告されていない。 

 

感想

新しい疾患分類ではありますが、それなりに頻度が高く、かつ非常に予後が良いということで、きっちり診断をつける必要がありそう。

幸い組織像が比較的特徴的なのと、免疫染色が補助的に使えるので、知っていればそれほど難しくはなさそう(たぶん)。

過去 clear cell RCC と診断している症例の中に ccpRCC が混ざっている可能性があるという印象を受けました。

本文でも書かれていましたが、コンサバティブな治療(焼灼・部分切除・active surveillance)も適応になりそうなので、覚えておこうと思います。

 

 

↓ p40, 41 に記載されています。 

WHO Classification of Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs (World Health Organization Classification of Tumours)

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  • 作者: Holger Moch,Peter A. Humphrey,Thomas M. Ulbright,Victor E. Reuter
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【論文チェック】新膀胱造設に際して尿道断端の術中迅速診を省略できるか

こんにちは。

 

新膀胱造設に際して尿道断端の術中迅速診を省略できるか

という趣旨の研究です。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

・PMID: 31059666 DOI: 10.1097/JU.0000000000000317

・2019年

・Journal of Urology
・author: Labbate C, Steinberg GD ら
・シカゴ大学

目的
現在のガイドラインでは新膀胱造設に先駆けて尿道断端が陰性であることを確認することが推奨されている。そこで術中迅速陰性における尿道断端陽性率や再発率を調べた。

方法
・retrospective に膀胱全摘および新膀胱造設をうけた357名を集めた (尿道断端の術中迅速はしていない)
・中央値27ヶ月フォロー
・尿道断端陽性率と尿道再発を集計

結果
・6例に尿道再発を認めた (1.6%)
・尿道再発率は尿道断端陽性症例において高いとはいえなかった (p=0.22)
・15例の尿道断端陽性において全生存率は変化なし (HR 0.98, 95% CI 0.24-4.04)
・リンパ節転移 (N) ステージについて調べると、無再発生存においても悪いとはいえず (HR 2.33, 95% CI 0.95-5.73).

結論
術中の凍結組織診(尿道断端)を省略するのは安全に思える。これにより尿路変更術のパフォーマンスが改善するかもしれない。

 

感想

泌尿器病理医としては膀胱全摘後の尿道内再発というのはあまり経験しません。

おそらく症例の選択をしたうえで術式の適応を決めているためだと思います。

術前に尿道のアセスメントをしておけば迅速は要らないんじゃないかと、個人的には同意できます。

そもそも術中迅速診というのは永久標本にくらべて質が低いため、本質的に「あてにならない」ものです。永久標本と比べた時の凍結切片での偽陰性は避けられないもの(迅速では陰性だったが、凍結戻し永久では陽性だったというアレです)。

術中でなければアクセスできない、サンプリングできない場所で、少しでも術式選択のための情報が欲しいという場合に凍結切片を利用するのは賛成ですが、尿道粘膜などは術前に評価できる部分なので、わざわざ術中に精度の低い組織診をするメリットはないと感じます。

論文の主旨ではありませんが、膀胱全摘に際して尿管断端を迅速診へ出すというのも必須なのでしょうか?もし尿管に癌があれば腎尿管全摘をしなくてはいけないのではと思うのですが、尿管断端陽性例でも、追加切除で終わりにする場合もあって、このあたりのマネジメントについてはまた勉強してみようと思います。

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