uropatho’s diary

泌尿器病理医によるブログ

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放射線治療後のPSA再発に対してのマネジメント【NCCNガイドラインから】

こんにちは。

 

最近NCCNのガイドラインにログインできるようになったので(無料で登録可能)、最新版の「前立腺癌」をみていきます。

 

https://www.nccn.org/professionals/physician_gls/PDF/prostate.pdf

 

前立腺癌のガイドラインはVersion 4.2019 (2019/8/19) が最新。

 

今回は、「放射線治療後のPSA再発に対して」の項目をチェックします。

⇒ Radiation therapy recurrence (PROS-13)  に記載されています

 

前立腺生検はすべて病理医のもとに来るので頻繁に関わりますが、放射線治療やその後の経過については関与していないので、イメージがつかみにくく、よくわかっていませんでした。ガイドラインをチェックしてでおおよその流れを把握していこうと思います。

 

まず最初にチェックするのが "PSA persistence/ recurrence or Positive DRE" であり、放射線後の再発については


・ RTOG-ASTRO (Radiation Therapy Oncology Group - American Society for Therapeutic Radiology and Oncology) Phoenix Consensus による定義を使用します。

 

放射線治療後に、PSAが高いとか上昇してくるという場合や直腸診で陽性であるという場合のガイドラインになります。

 

まずは、Local therapy (局所治療) の対象かどうかによって方向性が変わります。

 

①局所治療対象となるのは
・T1-T2, NX or N0 (最初に限局性前立腺癌と診断)
・期待余命 >10年
・PSA < 10 ng/ml
というケース。

 

②局所治療対象にならないのは、①以外の場合でありその流れは

②-1
Bone imaging へすすみ骨転移の検索。

そのうえで
②-2
ADT (ホルモン治療) or 経過観察

②-3
病勢進行時には
・Systemic Therapy for Castration-Naive Disease ・・・ PROS-14
・Systemic Therapy for M0 CRPC ・・・ PROS-15
・Systemic Therapy for M1 CRPC ・・・ PROS-16
にそれぞれ進みます。

 

①局所治療対象の場合

①-1
・リスクの階層化→PSADT ・・・PSA倍加時間を調べる
・骨転移検索
・前立腺MRI
・前立腺生検
・次を考慮 (胸部CT, 腹部/骨盤のCT or MRI or PET/MRI)
・前立腺生検

①-2
・前立腺生検で癌が認められた場合で、遠隔転移がない場合
→経過観察 or RP+PLND (前立腺摘除+リンパ節廓清) or Cryotherapy (凍結療法) or High-intensity focused ultrasound (HIFU, 高密度超音波) or Brachytherapy (小線源治療)

・前立腺生検で陰性であり、遠隔転移もない場合は
→経過観察 or ADT

・転移陽性 もしくは 治療後に進行がみられた場合は, ②と同じくPROS-14, 15, 16へ。

 

感想

放射線治療後に前立腺摘除 (salvage RP) が提出されてくることはほとんどないので、適応がないのかと思っていましたが、条件付き (salvage RP に習熟した外科医、合併症が高率に起こる) で記載されていましたので、限定的ではあるものの施行される場合もあるということです。

実際には手術を避けたくて放射線を選んだ患者も多いでしょうし、合併症が増えるとなれば、実際に放射線治療後に手術にすすむ方は非常に少ないだろうなと。

それと、active surveillance 後の生検は診るものの、radiation 後の生検は見かけないので、大多数の流れとしてはADT (ホルモン治療) に流れているのかなと思われます。

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