uropatho’s diary

泌尿器病理医によるブログ

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【論文チェック】新膀胱造設に際して尿道断端の術中迅速診を省略できるか

こんにちは。

 

新膀胱造設に際して尿道断端の術中迅速診を省略できるか

という趣旨の研究です。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

・PMID: 31059666 DOI: 10.1097/JU.0000000000000317

・2019年

・Journal of Urology
・author: Labbate C, Steinberg GD ら
・シカゴ大学

目的
現在のガイドラインでは新膀胱造設に先駆けて尿道断端が陰性であることを確認することが推奨されている。そこで術中迅速陰性における尿道断端陽性率や再発率を調べた。

方法
・retrospective に膀胱全摘および新膀胱造設をうけた357名を集めた (尿道断端の術中迅速はしていない)
・中央値27ヶ月フォロー
・尿道断端陽性率と尿道再発を集計

結果
・6例に尿道再発を認めた (1.6%)
・尿道再発率は尿道断端陽性症例において高いとはいえなかった (p=0.22)
・15例の尿道断端陽性において全生存率は変化なし (HR 0.98, 95% CI 0.24-4.04)
・リンパ節転移 (N) ステージについて調べると、無再発生存においても悪いとはいえず (HR 2.33, 95% CI 0.95-5.73).

結論
術中の凍結組織診(尿道断端)を省略するのは安全に思える。これにより尿路変更術のパフォーマンスが改善するかもしれない。

 

感想

泌尿器病理医としては膀胱全摘後の尿道内再発というのはあまり経験しません。

おそらく症例の選択をしたうえで術式の適応を決めているためだと思います。

術前に尿道のアセスメントをしておけば迅速は要らないんじゃないかと、個人的には同意できます。

そもそも術中迅速診というのは永久標本にくらべて質が低いため、本質的に「あてにならない」ものです。永久標本と比べた時の凍結切片での偽陰性は避けられないもの(迅速では陰性だったが、凍結戻し永久では陽性だったというアレです)。

術中でなければアクセスできない、サンプリングできない場所で、少しでも術式選択のための情報が欲しいという場合に凍結切片を利用するのは賛成ですが、尿道粘膜などは術前に評価できる部分なので、わざわざ術中に精度の低い組織診をするメリットはないと感じます。

論文の主旨ではありませんが、膀胱全摘に際して尿管断端を迅速診へ出すというのも必須なのでしょうか?もし尿管に癌があれば腎尿管全摘をしなくてはいけないのではと思うのですが、尿管断端陽性例でも、追加切除で終わりにする場合もあって、このあたりのマネジメントについてはまた勉強してみようと思います。

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