uropatho’s diary

泌尿器病理医によるブログ

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Renal dysplasia の組織像

こんにちは。

 

あまり目にすることは無いと思いますが、renal dysplasia の症例です。

 

教科書的には

・先天的な renal malformation 

・ureteric bud と metanephric blastema の交通不全から生じる

・1000~4000人に1人で比較的 common

・鑑別診断は, autosomal recessive polycystic kidney disease (ARPKD), autosomal dominant polycystic kidney disease (ADPKD), acquired renal cystic disease (ARCD) などの嚢胞性疾患

・組織学的には幼弱~分化した腎組織の構築がみられ、軟骨組織 (fetal cartilage)を見ることがある。

 

dysplasia というと腫瘍性病変や悪性腫瘍をイメージしてしまうのですが、腎の場合は発生段階での奇形(malformation)に相当します。

 

↓ 低形成腎および尿管異所開口の診断で切除された検体です。

 

(弱拡大)嚢胞形成が見られ、辺縁部には小さいながら皮質・髄質が確認できます。

 

正常に分化した糸球体・尿細管組織です。

 

嚢胞壁の拡大。単層の(ここでは円柱)上皮が裏打ちします。

 

未熟な管腔構造と間質組織が見られます。

 

腎低形成ではこのような未熟な構造は見られないため、本症例では renal hypoplasia ではなく renal dysplasia と考えました。

 

その拡大像です。正常に分化すれば腎のcollecting system になるのでしょうか。

本症例では軟骨組織は認めませんでしたが、幼弱な間質組織はなんとなく軟骨基質様に思えます。

 

↑ 尿管のduplication (重複)も認めました。筋層を共有した2つのlumen が確認できます。 

 

比較的commonと書かれていましたが、悪性腫瘍ではないため切除対象になり難く組織像を見る機会は非常に少ないと思います。参考になればと思います。

 

以下、今回参照した教科書。 

Uropathology E-Book: A Volume in the High Yield Pathology Series (English Edition)

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