uropatho’s diary

泌尿器病理医によるブログ

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診断入力を高速化&省力化する超便利ツール。病理医におすすめの【ぺースター】についての話。

こんにちは。

 

表題をすこしおおげさに書いてしまいました。

私が病理医として日々の診断入力をする上で、欠くことのできないスーパーアプリケーションソフトがあります。
ものすごく便利なため、私が診断するPCにはすべて配置させてもらっています。個人のPCも含めて6台です。(個人のPCではDropBoxというクラウド上に保存しているので常に連動します)。
そのアプリは「ペースター」といわれるものです。

テキストデータを登録しておいて、クリックするだけで単語や文を入力できる優れたソフトです。

パソコンが普及して久しいですので、カット&ペーストといわれて全く聞いたことがない人は少ないかもしれません。
そのペースト(貼り付け)の部分に特化したアプリケーションがぺースターです。
カット&ペーストもしくはコピー&ペーストは、いったんクリップボードに保存され、その保存されたデータ(おもにテキストデータ)を出力するのですが、通常は直前に覚えさせたひとつの文章や語句しか貼り付けることができません。

このクリップボードを拡張するという機能をもたせたのが、今回紹介するぺースターです。

 

前置き

今では病理診断書の作成はほぼパソコンでのキーボード入力になりました。
まだ検査会社の診断書では手書きされている病理医の先生もおられます。しかしオーダーリングシステムやカルテの電子化がすすむ中、病理診断システム導入されている病院では基本的にキーボード入力だと思います。大きな病院では電子カルテと連動していることがほとんどと思います。

ブラインドタッチでの入力できない人や、ワープロ入力が苦手な人にとってはやりにくい世の中になったかもしれません。(たいていの年配の先生は苦手かもしれないので、若い先生が下見をするという体制をとっているかもしれません)。

私は40代の病理医ですので若くはないですが、ベテランというほどでもない年代です。しかし、学生時代にはホームページを作っていたこともありますし、小学生のときには自宅にPC-8001やらPC-9801があったのでパソコンの黎明期から馴染みがあります。カセットテープにプログラムを保存するという時代を知っているレトロな人間です。

ただブラインドタッチは苦手というか遅いですし、肩こりもちなのでキーボード入力はできるだけ最小限にしたい。

日本語入力システム(MS-IMEやATOKのこと)にショートカットを登録してキーボード入力を省力化しておられる先生もいます。病理診断システムには単語登録機能があって定型句を貼り付けることができたりします。

自分専用の端末があってかつ、そこでしか診断しない。という場合はそれが最も速い入力方法となりえます。

しかし、別のPCで診断する・PCが更新される可能性がある・他病院でも診断する、、などの際にはその登録単語データを容易に移行できる・持ち運びできる、ことができなければ不便でしょうし、パソコンが故障したときにバックアップがなければ一から入力しなおしなどという骨のおれる作業が必要になります。共用のPCでは変な語句を登録すると他人に迷惑かけてしまうのも気がかりですよね。

 

「本題」おすすめするぺースター。

ぺースターとして私が使用しているのは「ToMoClip」というフリーソフトです。インストール不要で動作可能であるため、その実行ファイルをUSBメモリに入れておくだけで、あらゆるPCにおいて即座に使用可能となります。

インストール不要ということはレジストリを変更しないためPCの動作に影響しませんし、その点でも安心して使うことができます。

USBメモリを刺すことが禁じられている病院も多いので、そういう場合はシステム管理の担当者に持っていって、PCにコピーしてもらいます。ウィンドウズ95からウィンドウズ10まで異なるOS であっても全く同じように使用できています。

以下のリンクからダウンロードすることで入手できます。フリーソフトなので無料です。

ToMoのソフト

2018/7/1にアップデートされています。私はもうすでに6年以上使っていますので旧バージョンになりますが、今でもまったく不便なく使えています。

実際にどんな感じで使っているのか見ていきましょう。

解像度が悪いですが、左にワードを立ち上げています。右側のウィンドウがぺースター(ToMoClip)です。すでに語句を登録していますので2列にわたって表示されています。ぺースターのウィンドウの下には赤・黄・緑・青・黒の5つのページがあるので、このような感じで5ページ分登録しておくことができます。私の場合は、青ページは前立腺診断の入力用になっています。

ぺースターの語句の中から「No evidence of malignancy, biopsy of the prostate」を1クリックしたところです。ワードのカーソルの位置にテキストが入力されました。

次にその上の、「1-12 No tumor」 と表示されている部分をクリックします。

すると上の画像のように

1. No tumor
2. No tumor
3. No tumor
4. No tumor
5. No tumor
6. No tumor
7. No tumor
8. No tumor
9. No tumor
10. No tumor
11. No tumor
12. No tumor

↑ これが一気に貼り付けられました。

このToMoClipがよいところは、「半角スペース」・「改行」を含めた文字列を登録できるところです。日本語入力システムの単語登録ではできない機能ですし、意外にこれができるぺースターは少ないんです。

私のクセなんですが手入力すると「biopsy」が「biospy」になることがあります。「バイオスパイってなんだよっ」と思われたくないですし、ぺースターにしていると確実にタイプミスがなくなるので、安心感が得られます。

診断での実際

例えば、前立腺生検での診断入力だと、1つずつの生検コアに対して所見を記載するので、順番に

「Adenocarcinoma」「, 3+4」「, 40%」「, (Grade Group 2; 20% Gleason pattern 4)」「, 非連続性進展」「, 神経周囲浸潤像(+)」「, IDC-P成分(+)」

を打ち込むとします。すると、

「Adenocarcinoma, 3+4, 40%, (Grade Group 2; 20% Gleason pattern 4), 非連続性進展, 神経周囲浸潤像(+), IDC-P成分(+)」

と流れるように入力できてしまいます。

他にも、TUR-PやHoLEPの場合は

「Hyperplasia of the prostate, TUR」をクリックして

「上皮および間質の過形成をともなう前立腺組織を認める。腺管の拡張・萎縮や炎症細胞浸潤を見る。いずれにも悪性像は認めない。」をクリックするだけでほぼ診断ができてしまいます。

腎癌の診断の場合は、ほかのページに登録していますので、

1クリックで「Clear cell renal cell carcinoma, G2 (Fuhrman grade 2, WHO/ISUP grade 2), pT3a, INFa, v1, ly0, eg, fc1, im0, rc-inf0, rp-inf0, s-inf0, lt. kidney」と入力して、細かなところだけ手直しします。

所見の部分も「淡明~好酸性の細胞質を有する腫瘍細胞が胞巣状に増殖する。Clear cell renal cell carcinomaの像である。出血・硝子化を伴う。」などの語句を登録していますので、下見がない場合なんかはとても便利です。

 

あ、もちろん胃生検や大腸のEMRなんかでも貼り付けを使っています。

 

応用編ですが、「拡張文字」の設定をしておけば、今日の日付⇒「2018/08/16」

今日の日付+月・日⇒「2018年8月16日」

なども1クリックで入力できますし、実際に「日付+時間」を入力できるようにしておいて、術中迅速診断の時のタイムスタンプとして使用しています。

「2018年8月16日 23:01」←こんな感じです。

他の使い方も

このToMoClipは病理診断入力だけに威力を発揮するというわけではありません。よく使うメールアドレスも登録しておけますし、メールの定型文も登録できます。ブックマークのようにインターネットのリンク先も登録できます。医療サイトのIDやパスワードなんかもいちいち覚えてられないので、登録しておけば便利です。あまり使いませんが顔文字も登録しておけば「( ̄ー ̄)ニヤリ」←すぐに張り付けることができます。

私はこのブログを書く際はほとんどキーボード入力ですが、「コード入力」が必要な際もぺースターを利用しています。

ToMoClipの構成

ToMoClipの構成は

一つのフォルダの中にあるこの5つのファイル から成り立っています。

例えば「診断用のToMoClip」というフォルダにこの5つをいれておけば、それで完結します。この「tmc.exe」が実行ファイルですので、どこかにショートカットをおいておけば簡単に起動できます。使ってみた感じでは「.bhd」は実際の語句のデータが入っていて「.dat」はウィンドウが表示される大きさや位置についてのデータが入っているようです。「.bmp」は色分けされた各ページのアイコン画像です。最初は最低限「tmc.exe」と「tmc.bmp」があれば実行できますし、使っていくうちに残りの2つのファイルが勝手に作成・更新されていきます。readme.txtはなくても困りませんね。

ということは、 「診断用のToMoClip」以外にも「ブログ作成用のToMoClip」とか、複数のフォルダを作っておくと、異なる語句データを設定した別のプログラムとして使用できるわけです。ただし、一度に実行できるToMoClipは一つです。

もし、別のPCに設定だけ持ち込みたいという場合はこの「.bhd」ファイルだけ移動すれば良いはずです。

初めて使う際に

上記のサイトからぺースターをダウンロードして解凍すればすぐに使える状態になります。おそらく最初に実行すると、、

こういう小さな画面が出てくると思います。ウィンドウの中で右クリックすれば新規作成から語句の登録ができますし、編集も右クリックからメニューがでてきます。

最初に使うときには「ページ設定」から ↑ のように「履歴を取らない」にチェックをしておきます。

もともとこのアプリはクリップボード拡張機能です。コピーした履歴が自動で登録されていってしまいますので、ここは要チェックです。

また、「シングルクリックで貼り付け」というチェックが入ってなければチェックしておきましょう。いちいちダブルクリックは面倒ですから。

新規作成から語句を登録できますが、クリップボードからも作成できます。ここらへんは使ってみればわかってくるはずです。

日本語入力システムに単語を登録しすぎると

複数の先生が使うPCでは色んなことが起こります。「しょくどう」とか「こう」とか入力してみましょう、何か変な語句がでてくるかもしれません。

私の関わるあるPCです ↓

↑ とあるPCで「こう」と入力したところです。いきなり「好酸球の浸潤もみられます。」と変換されます。

↑ 同じPCで「しょくどう」と入力したところです。

普通にキーボード入力していると単語登録の影響で予期せぬ変換が起きてしまうことがあります。文中の「しょくどう」や「こう」が異常に長く変換されて一瞬何が起きたのかわからなくなるんです。このPCでさらに語句を登録するのは、、、やめたほうがいいですよね。「ToMoClip」を使いましょう。

最後に

長くなりましたが、「ToMoClip」は仕事上でとても強力なテキスト入力支援ツールとなりえますし、仕事以外にも様々な局面で役に立ってくれます。病理医向けに病理診断入力ツールとして紹介しましたが、おそらくは万人にとって有益なツールであるに違いありません。

この記事が誰かのお役に立てれば幸いです。

 

それでは。 

 

 

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