uropatho’s diary

泌尿器病理医によるブログ

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膀胱壁内に脂肪組織が見られることは稀ではありません。

こんにちは。

 

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)では腫瘍の採取と切除を目的とし、内視鏡的に粘膜から浅筋層をループ電極を用いて削るように切除します。

ですので、膀胱の固有筋層をすべて削ってしまうような深い切除をした場合は穿孔を起こすため、尿が膀胱外(主として後腹膜ですが、後壁の腹膜付着部を欠損すると腹腔内へ)漏れてしまいます。

穿孔が起これば手術は中止になりますし、術者としては切除する層が深すぎることを嫌うものです。

ところで、膀胱の検体にはよく脂肪組織が含まれています。これを臨床の先生に供覧すると、深く入りすぎたかもしれないと泌尿器科医が誤解されることがあります。

(場合によっては術者が上級医に叱責されることも、、、)

かばうわけではないのですが、膀胱壁内には固有筋層外に限らず脂肪組織が含まれることがしばしば見られます。

TURで採取された1切片ですが、上方に粘膜上皮があり、粘膜固有層には血管の拡張像が目立ちます。真ん中のほうに成熟脂肪組織が見られます。その直下に固有筋層を含むことからちょうど筋層より浅い部分に脂肪組織があるとわかります。

その拡大です。それほど大きな脂肪組織ではありませんがTURをしていると内視鏡画像では少しキラキラしてみえるかもしれませんね。 

主として浅筋層までの採取を行うのがTURの目的ですからこの切片は適切な深さで切除されていますし、挫滅や余計な熱変性もないので上手にsamplingされていると思います。

病理医としては間違ってはいけないのは、粘膜固有層や固有筋層にある浸潤癌をみたときにそこにある脂肪組織をみて、筋層外への浸潤(pT3)だと認識してしまうことです。

普通に採取された経尿道的切除検体では筋層外の組織が含まれることはあり得ない。ということを知っていれば、病理医はT3以上の診断をつけることはしませんし、T3以上の診断を頻繁につけてしまう病理医がいれば、そのことを理解していない可能性もあるため、泌尿器科医は病理医と話をして本当のT3なのか確認すべきでしょうね。

 

それでは。

 

 

 

 

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