uropatho’s diary

泌尿器病理医によるブログ

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前立腺生検本数は12本までにして欲しいという願い。

こんにちは。

 

泌尿器病理医が日々思ったことなどを書いています。

 

先日、他院の標本ですが前立腺生検を拝見しました。

 

なんと24本生検!

 

日常的にやっているのか、たまたま多いのかわかりませんが、勘弁して欲しいと感じたのが正直なところです。

 

昔は6本生検 (sextant biopsy) でしたが、徐々に本数が増えて8本 (octant)となり、現在は12本が主流となっていると思います。

 

臨床医としては、生検数を増やしたほうが癌の検出率があがるだろうという考えなのでしょうか。一度増やしたものはもう減らすことができないだろうと思いますが、今後もどんどん増えていくのかと思うと恐ろしいです。

 

その施設の病理医の方には頭が下がります。どのくらい件数があるかわかりませんが、非常に大変なのではないかと邪推します。

 

単純に6本みるのと24本みるのとでは4倍の違いがあり、その時間も労力も、そして見落とす確率も跳ね上がります。時間と労力とリスクを甘んじて受けなければならないし、それに対するドクターフィーは同じ(1臓器に対する診断ということですので1本だろうと24本だろうと診療報酬は同じです)ということもリアルな問題としてあります。

 

病理医の立場として勘弁して欲しいということもあるのですが、標本作成にたずさわる技師さんの時間・労力・リスクも同様に大きいですし、当然標本作成にかかるコスト(プレパラートやホルマリン・エタノール・キシレンなどの有機溶剤・染色のコストから標本の保管コストに至るまで)も増えます。(24回も刺される患者さんもかわいそうですが。)

 

ところで、そのうち1coreの一部には尿道球腺が含まれていました。 

前医では異型腺管があるということでp40の免疫染色も追加されていて、最終的に二相性が保持されており癌ではないと判断されていました。

 

泌尿器病理を専門にしている先生なら尿道球腺と癌腺管の鑑別に苦慮することは少ないかもしれませんが、日本では病理医が少ない上に泌尿器病理医となるとかなり希少。

しかし私自身もそうですが、専門分野だけしか診ないというのは不可能で、種々の臓器をみなくてはならないので一人ひとりの病理医の負担は大きいです。

 

幸い私はすべての前立腺生検でHEと同時作成した34βE12染色を用いているので、常時同一切片を比較して二相性の確認が可能です。これをすべてHE染色で判断せざるを得ない上に、本数が今以上に増えるのであればかなりキツイと思います。 

 

前立腺癌はとくに高齢者では罹患率が高いですが、様々な臓器の中で最も予後の良い癌腫ですので、微小癌をみつけることには賛否があります。 PSA検診ですら、賛否があるくらいです。私のかかわる施設でこれ以上本数が増えないことを祈るばかりです。

 

今回はネガティブな記事になってしまいましたが、 意識の高くない病理医の戯言ですので聞き流してください。

 

それでは。

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