uropatho’s diary

泌尿器病理医によるブログ

MENU

スポンサーリンク

Inverted papilloma と von Brunn's nest

こんにちは。

 

Inverted papilloma と von Brunn's nest についてです。

いずれも膀胱の三角部近傍に好発します。良性の病変ですね。

こちらは Inverted papilloma です。表面(画像の左側)に非腫瘍性の尿路上皮が覆っています。

その下方には内反性に増殖する均一な上皮細胞が見られます。細胞巣が島状にみられたり、間質の浮腫状の変化を伴います。核はやや楕円形をとることが多いです。

嚢胞状に変化することもあります。 

同じ症例の別の視野です。Inverted papilloma を膀胱癌と診断されてしまう症例はこういう場合かもしれません。右方向に非腫瘍性の尿路上皮が被覆していて、上皮下に腫瘍細胞が増殖します。核が楕円形でやや紡錘形ですし、細胞密度は高いため悪くみえてしまいます。が、表面は尿路上皮で覆われていることが大事で、内反性に増殖することと核は均一で多形性に乏しいことから Inverted papilloma と判断できます。

実際の診断では臨床情報を確認して、三角部か頚部に生じていることや表面が平滑で有茎性の外観をしめすことなど、特徴的な内視鏡像であることも大事です。

組織像はあくまで平面しかも一つの面での評価です。3Dでどう見えているかを無視して診断することはできませんし、膀胱腫瘍の90%以上が悪性であることを考えると良性腫瘍であるという判断は慎重にすべきでしょう。

(たまにそういった臨床情報なしに(先入観なしに)病理診断をしてほしいと考えている臨床医がおられます。昔はそれでもよかったかもしれませんが、単なる絵合わせでは診断にはなりえません。病理にかかわらず、「診断」というのは可能な限り多くの情報を集積して医学的に最も妥当だと判断して決めるものなので顕微鏡像単独で判断するのは危険性が高すぎます。今のご時世、誤診してもオッケーとはならないでしょうから)

 

話がそれましたが、次はブルン細胞巣です。von Brunn's nest ですね。もちろん良性の増殖性病変です。

Inverted papilloma と比べると核が小さくて可愛らしい感じです。細胞の増殖傾向も比べ物にならないくらいおとなしいです。内反性に細胞が増殖しているのは同じですが、細胞質は正常の尿路上皮と同様で、やや淡明です。

このBrunn's nest 内に癌の進展(CISの進展)が認められる場合があります。

Brunn's nest 内にCISが進展しています。核濃染と腫大をしめす異型細胞を認めます。

こちらは無事(腫瘍が進展していない)な部分が真ん中左にあり、その右にはCISが進展している部分が認められます。

これも真ん中から下方の拡張した部分=嚢胞性膀胱炎 cystic cystitis (cystitis cystica) には癌はなく、その左上のBrunn's nest 内には癌が進展しています。

膀胱粘膜上皮はしばしば脱落して表面のCIS部分が無くなってしまうことがありますので、こういった陥入した部分にだけCISが残存する場合もあります。その時には、pTa とすべきか pTis と診断すべきか悩むことになりますが、ほかの生検検体やTUR切片をみて総合的に判断しています。 もちろん内視鏡的にどう見えているのかも勘案して、、ですね。

 

それでは。

スポンサーリンク