あたらしい皮膚科学が発売されたというのを聞きつけて第3版を購入しました。
医学書のほとんどは1万円をこえる価格ながら、これは7800円+税なので安いです。
私は第1版を持っていますが、2005年の発売なんですね。第2版が2011年で今回2018年のものが第3版です。
皮膚科医がつけてくる臨床病名をみて、「何だろうこれは?」と思ったときにまず調べるのがこの「あたらしい皮膚科学」です。(あと「一冊でわかる皮膚病理」もよく使います)
私自身は泌尿器病理医を名乗っていますが、病理医たるもの幅広い疾患を見る必要があるため、皮膚病理の診断に頭を悩ませることも少なくありません。
(皮膚科⇒非常に疾患がおおい 疾患のイメージがわきにくい ⇒ 苦手)
臨床医が組織を採取してどんな情報を求めているのかが専門分野以外ではピンとこないので結構敷居が高いんです。
もともと第1版を購入したのはなぜかというと、インターネットで「あたらしい皮膚科学」が無料で公開されていたのを普段からよく参照していて、その内容の質の高さと簡潔な記載にかなりお世話になったからです。
さすがにすべての図表がweb上でみられるわけではないので1冊成書を持っておくようにしたのが最初のきっかけです。
現在も北海道大学皮膚科のホームページで第2版の「あたらしい皮膚科学」が公開されていて無料でみることができます。
↓北大ホームページへのリンクです
これはすごいことですね。一部の表や図はさすがに表示されませんが、すべてのページにわたって無料で公開しているんです。
加えて成書の価格は抑えられている。写真が豊富でカラー、619ページのボリュームで1万円切っているのは素晴らしいと思います。
私の所持している1版から2版への改訂では次のような点が変更されました
●毎日の臨床で必要不可欠な「ダーモスコピー」の章の新設。
●「臨床写真の質の向上」として、北大皮膚科で最近6年間に撮影した臨床写真11万枚、および国内外の複数の先生方から供与していただいたものの中から、550枚のより教育的で質の高い写真を厳選し、追加・入れ換えを行って、総計1600余枚の収載。
●最新の国際的な疾患分類・病名に対応し、疾患名、診断基準、概念、治療法もアップデート。血管腫、水疱症、魚鱗癬、梅毒、悪性黒色腫、アトピー性皮膚炎、ほか多数。
●医学生、看護師などからの要望に応え、皮膚科特有の難しい漢字、英語のルビ(読み方)を充実。
さらに2版から今回の3版への改訂では
●乾癬, 悪性黒色腫, 生物学的製剤など最新の疾患概念・診断基準・治療法に対応。
●最新の国際的な疾患分類・病名に準拠し, これまで未収載だった疾患や新しい分類で追加された疾患を掲載: 血管炎, 皮膚筋炎, 表皮水疱症, 掌蹠角化症, 自己免疫性疾患, 悪性リンパ腫, 間葉系悪性腫瘍など。
●とくに読むのが難しい漢字や英語にルビ(読み方)をふり, 医療者が自信をもって読めるようにさらに配慮。
●医師国家試験出題レベルの重要疾患に★マークをつけ, ★マークの勉強で医師国家試験に, さらに本書1冊を読み込むことで皮膚科専門医試験にも完璧対応。
第3版 序 より引用
以上のように新しい疾患や分類を加えてアップデートされているようです。
最近、硬化性萎縮性苔癬 (Lichen sclerosus) の症例をみたのですが、p339 (第2版ではp318)を参照すると
「病理所見」
表皮萎縮と液状変性がみられ, 真皮上層では膠原線維が均質化, 浮腫状となり細胞成分が減少する。進行すると真皮に帯状リンパ球浸潤をきたす。過角化および角栓形成が認められる。
以上のように病理医としてチェックすべきポイントが簡潔にまとまっています。肉眼像や組織像も載っています。最低限の時間で必要な知識を仕入れるには重宝しますね。
皮膚科医でなくても一般病理医や学生・研修医にとって良書の一つでしょう。