こんにちは。
先日、「大腸癌取扱い規約-第9版」が発売されました。
2018年7月版です。
自称泌尿器病理医の私でも胃癌・大腸癌をみないわけではないので、昨年に改訂された胃癌取扱い規約に引き続き、このたびの大腸癌取扱い規約についてもフォローしないといけません。
この新規約を見て、気づいたところや気をつけないとなと思ったことについてざっと触れてみたいと思います。網羅するつもりはありませんので、細かくは各自施設にある取扱い規約を参照してください。
Group分類
規約が改定されるたびに微妙に変化する文言。それがGroup分類を悩ましいものにしています。
が、今回のGroup分類は前回2013年の第8版と比べて変更はないと思われます。
私はよくわかっていなかったのですが、炎症性腸疾患にはGroup分類をせずに「潰瘍性大腸炎に出現する異型上皮の病理組織学的判断基準の異型度分類」を用いて記載するとかかいてます。その詳細は書いていません。
しかし、Group分類しなかったら文句言われそうですね、、、
癌遺残
内視鏡治療後の癌遺残(ER)という項目は、ER1のなかにER1aとER1bという亜分類ができてます。ER1a はHM1, VM0 のこと、ER1b は HM0, VM1 または HM1, VM1 のことだそうです。
そもそもこれは病理医が判定すべき項目ではないように思います。病理医が判定したVMとHMを基準にして決定・分類されるものなので、 我々病理医はVMとHMを判定して記載しておけば良さそうです。注釈にかかれているように、ER2という項目は肉眼的に明らかな癌の遺残がある場合につけるので、病変を切除した内視鏡医が判断すべきもの。病理医のつけたHM/VMに臨床医の肉眼所見を加えて総合的に判断してもらいましょう。
根治度
前規約にあった、内視鏡治療の根治度(CurE)がなくなっています。そもそもERとどう違うのかよくわからないですし、なくなったのは良い点です。
手術治療の根治度は、前記約と変更なしですね(これについても病理医が判定すべきなのはPM・DM・RMです)。
組織型
カルチノイド腫瘍と内分泌細胞癌 endocrine cell carcinoma が 前規約では3.1・3.2として独立して扱われていたのが、悪性上皮性腫瘍の中に編入され、2.4・2.5として分類されています。そのあとの分類のナンバリングがすべてずれてます。その他はほぼ同じでしょうか。
説明の項目にはカルチノイド腫瘍と内分泌細胞癌の記事の横に縦線が引かれて、目立つようになってます。記載内容はすこし改変されていますが、本質的には大きな変化はないようです。
間質量の記載が削除?
前規約まであった、med, int, sci の記載がなくなっていると思われます。
脈管侵襲
ここは変更があります。
ly0からly3だったものが、LyX, Ly0, Ly1になってます。
先頭のエルが小文字から大文字になっていますね。(本質的な変化ではないですし、、面倒ですが、胃の規約に寄せる形でしょうか)
そして侵襲が軽度だとLy1a, 中等度だとLy1b, 高度だとLy1cにするとか。
(マッチポンプ、、)
Vについても大文字に変わるという点は同様ですが、さらにV2という「肉眼的に侵襲を認める」という項目が登場。
注釈が7つあって、注7には、「内視鏡切除標本では、Ly1, V1の細分類はしなくてもよい」とあります。
簇出
前規約からだったと思いますが、Budding grade が仲間になりましたね。
Grade1~Grade3に分かれていました。
内容は変化なく、記載上はBD1~BD3にするそうです。
(0-4個/5-9個/10個以上)(Budding grade をBGでなくBDにしてしまうのは気持ち悪くないですか?)
EX
これは、「リンパ節構造のない壁外非連続性癌進展病巣」のことらしいです。
EXには脈管/神経侵襲病巣と、それ以外の癌巣 (tumor nodule : ND) があると、、
tumor nodule がなぜNDになるのか、気持ち悪いですね。
(正直、私はここを良く理解できないまま、というか覚えられないまま5年がたちました。そしてさらに前規約から変化しているようですがすぐには理解できないので省きます。いずれ理解できたときに記事を書きたいと思います)
「リンパ節構造のない壁外非連続性癌進展病巣」が出てこないことを祈りつつ(半分冗談)、診断時に遭遇したら規約とにらめっこしましょう。
Pn
前回はPN0 とPN1 (PN1a/ PN1b)にわかれていました。それは同じ。
でもPnX, Pn0, Pn1 (Pn1a/Pn1b)という具合にXが増えて二番目のnが小文字になりました。
(小文字とか大文字とか、、、大事なことなんですよね?)
T1癌の浸潤距離の測定法
ここは、図のところのポリープの絵がちょっとだけかわってます。
組織図譜
ほぼ同じ写真です。
簇出の写真がなくなってます。
Peutz-Jeghers症候群の写真が差し替えになっています。
TNM分類
前規約では7th edition だったのが、8th editionに替わっています。
規約上、壁深達度にほぼ変化はないでしょうか。
リンパ節転移についてはN1がN1a/N1bに細分化され、N2がN2a/N2bに細分化されているようです。
(領域リンパ節・腸管傍リンパ節・中間リンパ節・主リンパ節・側方リンパ節の違いは標本上はわからないので、病理医が「標本を見る⇒転移があるかどうか探す⇒リンパ節を数える」という作業は変わるものではありませんね。)
あと、虫垂のTNM分類・肛門管のTNM分類・大腸と虫垂のカルチノイドについても記載されています。
最後に
切除標本の病理学的記載事項のチェックリストが載ってます(P105)。
記載例も前回同様載ってますので、これは親切ですね。
全体的に見て、フルモデルチェンジというよりはマイナーチェンジという印象です。
数年ごとにかわる規約、ざっとみただけですが、なかなか大変です、、、