uropatho’s diary

泌尿器病理医によるブログ

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皮膚血管腫(動静脈血管腫・動静脈奇形)の組織像

こんにちは。

 

血管腫 (hemangioma)は、皮膚などにできる良性の病変ですが、最近は血管奇形 (vascular malformation) と書いた方がいいのかなと思ったので記事にしました。

 

頭皮の病変の組織像です。弱拡大では真皮内から脂肪組織にかけて楔状に血管腔の集簇像を認めます。中型の血管が主体で、変形・屈曲した血管も見られます。

 

↓ 別の視野の中拡大。血管平滑筋を有した筋性血管の集簇像が見られます。

 

↓ さらに別の視野。赤血球を容れる筋性血管の間には膠原線維の増生を認めます。

血管壁の平滑筋構造がしっかりしているため、形態的には動脈様の像が主体だと思われます。 「血管腫」と診断しておけば臨床的には問題ないんじゃないかと思いますが、細かく分けるのであれば、「動静脈血管腫」かと思います。

血管腫は腫瘍性病変ではないので、血管奇形と呼んだ方が良いという話があり、下に最近の分類であるISSVA分類を引用しておきます。(ISSVA: International Society for the Study of Vascular Anomalies)

 

ISSVA分類と従来の分類の対比

ISSVA分類 従来の分類
脈管性腫瘍 vascular tumors  
  乳児血管腫 infantile hemangioma いちご状血管腫 strawberry hemangioma
脈管奇形 vascular malformations  
  毛細血管奇形 capillary malformation 単純性血管腫 hemangioma simplex
毛細血管拡張症 teleangiectasia
ポートワイン斑 portwine stain
リンパ管奇形 lymphatic malformation リンパ管腫 lymphangioma cystic hygroma
静脈奇形 venous malformation 海綿状血管腫 cavernous hemangioma
静脈性血管腫 venous hemangioma
筋肉内血管腫 intramuscular hemangioma
滑膜血管腫 synovial hemangioma
動静脈奇形 arteriovenous malformation 動静脈血管腫 arteriovenous hemangioma

http://www.maruho.co.jp/medical/hemangiol/treatment/hemangioma/issva.html 

 

この中で乳児血管腫は消退する病変らしく (GLUT1陽性)、病理医が見る機会はあまりなさそうです。だいたい切除されてきて従来血管腫と診断していた病変は、vascular malformation と分類されるのでしょう。

もし細かく分けたいのであれば、 「毛細血管奇形 (capillary malformation)」, 「リンパ管奇形 (lymphatic malformation)」, 「静脈奇形 (venous malformation)」, 「動静脈奇形 (arteriovenous malformation)」に分類するというのがトレンド的には良さそうですね。

このような再分類とか疾患名の変更というのは定期的に起こる現象なので、治療方法が変わってくるとか本質的な違いがあるというような場合を除いては追従する必要性・緊急性は高くないと思います。(そのうちまた変わるでしょうし)

昔は〇〇と呼んでいた病変は今では△△と呼ぶ。というような例はたくさんありますので、臨床医が臨床診断を血管腫としているのであればそれに合わせておけばいいと個人的には考えています。

ただ、ISSVA分類では複数の病名が統合されてすっきりしているので理解しやすいですし、日常診療に取り入れて hemangioma (arteriovenous malformation) などとしておくのがいいかもしれません。

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